コース踏査体験記【宮城県田束山編】

NPOディスカバー・リアス 仲田信平 

うっそうと茂った笹藪を彷徨う。背丈を超える緑の中を、泳ぐように手で掻いて進んでゆく。踏み跡も見当たらず、目指す田束山(たつがねさん)の山頂も視認できなかった。

 昨年11月28日の夜、佐藤慎介さんの運転する車で、辻さん夫婦、私、昌平(私の長男)の5人は、東京を出発した。仙台市内のホテルで一泊し、翌朝、レース6日目のコースの下見のため、慎介さん、私と昌平の3人で、田束山の山頂へ向かう登山道に踏み入った。途中、ルートの確認のため、慎介さんと、私・昌平の二手に分かれた。

 しばらくは道も明瞭だった。途中の民家で飼い犬を見かけた。さらに登っていくと、踏み跡が怪しくなり、やがて道が途切れる。たまに地元の方が植林等の目的で入る他は、ほとんど人が足を踏み入れることはないように思われた(写真1)。前方の杉の木の根元付近から、キジが飛び立った。後方でサッという葉音がするので振り返ると、猿が去っていった。桃太郎になった気持ち。

 三陸の山は深い。次第に笹の密度が濃くなって来る。持っているのは、国土地理院の2万5千分の1地形図とスマホのGPS。地図上に記される目的地への登山道を進んでいる「はず」。しかし、GPSの精度には限界がある。さすがにおかしい、この先は危険と感じ、何度も、何度も麓へ戻り異なるルートを探索する。

 心が折れそう。私は林道まで戻り辻さん夫婦に車で迎えに来てもらうことを提案したが、昌平はもう少し進もうとの意見。周りを見渡すと、尾根付近では笹の密度が僅かに他より低い箇所がある。ここが山頂へ向かう(かつての)登山道かも知れない。もう少し、先に進むこととした。

 20分~30分ほど進むと、視界が開けてきた。ようやく山頂に到着。辻さん夫婦と無事、会うことができた。やがて、別ルートから慎介さんと合流(写真2)。田束山の山頂から眺める三陸海岸の景観が素晴らしかった(写真3、4)。

 その後、田束山から南三陸方面へと下るルートを視察し、その日は南三陸のホテル観洋に宿泊。翌日、合流した五味川さん、慎介さん、私と昌平の4人で、レース5日目のコース(気仙沼大島から馬籠小学校)を視察した。その日は、廃れた登山道で、特別天然記念物のニホンカモシカに出会った。

 東日本大震災からもうすぐ10年。昨年の台風や今年のコロナ等、多くの厄災に見舞われる。それでも、素晴らしい仲間達と共に、いつかステージレース三陸を開催し、豊かな三陸の自然に触れる文化を拡げていきたいと決意している。